二次創作小説『星降る丘で』

 ツイッターでお題リクエストを募集して、小説のようなものを書きました。
 ほら、この時期は……創作熱がヒートアップするから……(ビッグサイト的な意味で)
 3つの単語の組み合わせに番号が振られていて、番号を選んでリクエストしてもらうという形式でした。選ばれたお題は「烏/カラス」「朝靄」「雑多」。
 気合入れすぎて(笑)ツイッターに乗せるには文章量が多くなってしまったので、ここに掲載することにしました。


 西サルタバルタの“星降る丘”の上で、ヒュームの青年が首を傾げていた。
「これをどうすればいいんだ?」
 名をリインという彼は、駆け出しの冒険者である。手の平ほどの大きさの、陸魚の鱗を見つめてうーんと唸っていた。
 そしてその隣に、同じように鱗とにらめっこしている者がもう一人。ただし、その者の体はカラスのような漆黒の羽根で覆われていた。獣人ヤグードである。
「拙僧にも見当がつかん……司祭殿はこれを使えとしか……」
 丘の上で、ヒュームとヤグードが二人、陸魚の鱗を手に首を傾げ合うというおかしな光景が繰り広げられていた。
「ヒュームよ、他に何か聞いていないのか」
「先輩の冒険者も、これを持ってここに来いとしか教えてくれなかったんだ。自力で見つけるのも経験だとか言って」
「むう……流星の涙を手に入れるのにこれが必要なのは確かなようだ……」
 この二人は共に、この丘で手に入るという“流星の涙”を求めてやって来たのだ。リインはウィンダス土産にしたいという観光客の依頼を受けて、ヤグードはギデアスの司祭から祭事に必要だとお使いを命じられて。
 そして丘の上で遭遇したのだが、駆け出し冒険者と使い走りである。戦いに関してはお互いに未熟もいいところ。そこで無駄と知りつつも同時に「待った」をかけたのだ。それから戦う意志がないと示し合ううちに、目的が同じだと判明した……というのが事のいきさつである。
 問題があるとすれば、二人とも流星の涙の正体を知らないことだった。
「うーん……鱗で丘に……魔方陣を書くとか」
「それだ! おそらく陣の力で流星を召喚するのだ」
「おう、やってみよう!」
 鱗で地面をガリガリと引っかいて、でたらめな紋様を書いてみたが、何も起きない。起きるわけがない。
「違うか……では鱗を……天に投げて流星に突き刺すのはどうであろう」
「なるほど、それで痛みの涙を流すのか!」
「今こそヤグード教団の忍に伝わる投てき術を使う時! せいやっ!」
 鱗を手裏剣のように空へと放ってみるが、真っ逆さまに落ちてくるだけで何も起きない。起きるはずがない。
「では鱗細工の装束を作り、それを着て流星を呼ぶ儀式を…鱗が足りないか」
「鱗を砕いたものを流星の涙と呼ぶのかも……って丘に来る必要がないな」
「この鱗を食すと流星に手が届く力が身に付くのやもしれん」
「鱗に鱗を叩きつけて引っくり返すとか」
 思いつく端から試してみるが、ことごとく空振りに終わった。
 ああでもないこうでもないと繰り返すうちにやがて日は暮れ、星が瞬きだし、月が昇ってきた。
「ぬう……流星の涙よ何処に……」
 月が地平に向かって沈み始めた頃、リインもヤグードも疲れ果てて地面に座り込んでしまった。
「もうネタ切れだ。さっぱりわかんねえ……」
「思い返せば拙僧ら、奇天烈なことばかりしていたような……」
「途中からはただのヤケクソだったしな」
 リインが自嘲的に笑ってみせた時、視界の隅に何かがきらめいた。見ると、丘の上に立つ樹の根元がきらきらと光っている。
 歩み寄り、顔を近付けてみると、光の正体は根に降り積もった霜だった。
「きれいだ……もしかしてこれが……」
 リインが思わず手に取ってみるが、体温であっという間に溶けてしまった。
「ヒュームよ、鱗を皿のようにしてすくい取ってみてはどうだ」
「なるほど。それでこれを使えと」
 ヤグードの提案通りにしてみると、果たして霜は溶けることなく陸魚の鱗の上に乗った。
 続いてヤグードも鱗で霜をすくい取り、まじまじと眺める。
「これほど澄んだ霜とは……流星の涙の名にふさわしい美しさだ」
「へぇ。ヤグードもきれいとか美しいとかわかるんだな」
 茶化すようにリインが言うと、ヤグードは鼻で笑ってみせた。
「当たり前だ。拙僧らに言わせれば、貴様らの雑多な価値観の方が理解できぬ」
 現人神ヅェー・シシュを絶対とするヤグード族ならではの言葉である。
 リインは「一理あるかもな」と皮肉めいた笑みを返した。
 ヴァナ・ディールの人間は五つの種族から成る。そしてそれぞれの種族や地域で価値観があまりにも異なりすぎる。
 例えば、最も共通する価値観と言えるであろう女神アルタナ信仰でも、ここウィンダスでは女神の生まれ変わりとして星の神子を崇めているのだ。
 それほどに、人が見ている世界はそれぞれで違う。
「この流星の涙も、ただの霜だと笑う人もいるかもしれない。……だからこそな」
 リインは言葉を切るとヤグードに向き直った。
「同じ価値観を持つヤツ同士には、繋がりができるんだ」
 そして片方の拳を突き出す。戦いの動作としてではない。
 ヤグードは無言のままリインの拳を見つめ、やがてくちばしの端を微かに歪めると、自身の拳をゆっくりと持ち上げた。
「おかしなヒュームだ。獣人と馴れ合うなどと」
「これもお前の言う雑多な価値観ってやつさ」
「ふっ……だがそれもまた」
 ヤグードがリインに歩み寄ったその時、言葉が途切れた。
 肉の切り裂かれる鈍い音と共に、漆黒の羽根が舞い散る。背中から血を噴き出しながら、ヤグードは前のめりに倒れ、絶命した。
「大丈夫か?」
 倒れたヤグードの後ろに誰かが立っていた。リインが流星の涙のことを尋ねた先輩冒険者だった。
「心配になって後を追ってきたんだ。案の定ヤグードに襲われていたとはな…怪我はないか?」
 リインにケアルの魔法をかけながら、片手剣についた血を振り払い腰に納める。
「い、いえ、俺は大丈夫です」
「そうか。お、流星の涙は手に入ったんだな」
 リインの手に握られた鱗に霜が乗っているのを見て、「よくやったぞ」と微笑んだ。
 それから東の方角へと目をやる。サルタバルタの朝靄の向こうに広がる空は、うっすらと白み始めていた。
「ちょうど夜明けだ。獣人の活動が鈍るうちに街へ帰るとしよう」
 彼が振り向くと、リインは背を向けてヤグードの死体の傍らにしゃがみ込んでいた。
「そのヤグードがどうかしたか。見たところ目ぼしい品は持っていなさそうだぞ」
「……いえ、なんでもないです」
 答えるリインの肩は少しだけ震えていたように見えたが、立ち上がると素早く帰り支度を始めた。
「獣人は恐ろしい。お前も冒険者として生きるからには、奴らに立ち向かえる力を身につけねばな」
「そうですね。精進します」
「……どうした、泣いているのか」
「違います。これは……朝露が顔にかかったんですよ」
 確かに、薄い朝靄に包まれたサルタバルタの草原はしっとりと濡れ、草にはところどころ雫が光っていた。
 だが辺りにリインの頬を掠めるような高さの草は生えていない。
「……ヤグードに襲われて泣いているようではまだまだだな」
「違いますって、露ですよ、露」
 そして二人の冒険者は星降る丘を後にした。
 残されたのはヤグードの死体と、その手からこぼれ落ちた陸魚の鱗。
 鱗に乗っていた霜は辺りに散らばり、やがて朝日に溶けて静かに消えていった。

 終わり

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テーマ : FINALFANTASY XI
ジャンル : オンラインゲーム

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なんだか読んだ後ちょっと経ってから泣きました・・・

わたしたちはあまりにも無造作に獣人を倒しすぎていましたね。

みじさん>
ゲッショーのように言葉を交わせる獣人もいますからね。単純な「敵」ではないっていうのが深いです。
しかし一方で、敵であるのも事実なのです。ゲーム的にも…w

結構スムーズに書けたのですが、それも全ては星降る丘とかヤグードの背景とか、設定があまりにもよく練られていたからです(上述の単なる敵ではない所とかも)。改めてヴァナはすごい世界ですよ。

読んで頂きありがとうございました!
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